ゲルタ・ストラテジー

唯一神ゲルタヴァーナと怒れる十一の神々に敬虔なる真理探究者たちの散兵線における無謀を報道する。

「2018年に買ってよかったもの」

今週のお題「2018年に買ってよかったもの」

 

5位 冷蔵庫

 

 今年、冷蔵庫をやっとこさ買ったよ。おれがいまの城に移り住んでから2年が過ぎたが、まったく、それまで冷蔵庫なしでやってきたというのだからわれながら恐ろしいよ。冷蔵庫を導入してなにがよかったかって、食費がずいぶんと削減されたんだな。これまでおれは牛丼か二郎か、あるいは絶食するかというそのまんま野武士の生活をしていたんだが、いまやパスタなんかつくっちゃうもんな。洗練されたものだよ、おれも。まさか王侯のおれが料理をする命運にあるとはついぞ思わなかったな、生まれてこのかた。

 

4位 ラップトップ(2台目)

 

 ラップトップ(ノートパソコン)、以前からASUS製の可愛いやつを愛用していたのだが、どうも、こいつは軽くてバッテリーが長続きするという長所がある反面、原因不明の挙動不審を起こすから信用ならない場合もある。おれはさる婦人に定期的に詩を送りつけておるんだが、この「定期的」というところが重要で、クリスマスが過ぎてからクリスマスプレゼントを贈っても興ざめであるように、おれの詩もまた期限を守って送付されねばならない類のものだ。ゆえに、作業用のラップトップは信頼に値するものじゃなくちゃならん。だからまあ、いちおう保険としてAmazonで2台目のラップトップを買ってみた。中古の、東芝製のビジネスモデルのやつで、でかくて堅牢なつくりだ。スペックは十分おれの要求を満たしているから、おれはこいつに満足している。もっとも、ASUSの相棒ほどには愛着を抱いていないがね。

 おれの詩の威力か東芝の貫禄かわからんが、最近その婦人は、おれに意味ありげな流し目を見せてくれるようになったよ。まこと、順調な恋路ほど楽しいものはない。四行詩を打ち込むタッチ・タイピングの手さばきも、ついつい勇ましくなろうというものだ。先日機会を得ておれの詩を磯山に読ませたら、それなりに好評を得た。かの詩人に太刀打ちしようなんて、おれは毛ほども思っちゃいないが。おれの専門は詩じゃなくて剣なのだ。

 

3位 モンスターボールplus

 

 おれがポケモンGOをやるなんて意外だろう。おれだって意外に思っているよ。おれはあんまりゲームについて語らないが、じつはゲームにはかなり複雑で強烈な感情を抱いているよ。つまり大好きだし大嫌いなんだな。具体的に言えば、その蜜のごとき快楽はおれをおおいに酔わせてくれるけれど、麻薬のように依存しちまうから意図的に遠ざけるようにしている。ゲームがあったら二日三日は寝ないものな。でもその後、セーブデータを消したりしてなんとか依存を断ち切ろうとする。おれとゲームは常に冷戦状態にある。たまに偶発的な武力衝突が行われるのだ。

 だからおれのポケモンGOの楽しみ方も、はっきりしている。モンスターボールplus発売後、すぐに購入して起動、アプリと連動させ、秋葉原-新小岩間を数時間かけて走破。この間つかまえたポケモンはおよそ200匹かそこいら。ポケモンを乱獲して楽しんだら、もうあとは捨て置く、というわけ。長く依存しない。これがおれのゲームとの付き合い方だ。今年遊んだゲームのなかで、一番おもしろかったのがポケモンGO(と、いうよりも、モンスターボールplusのオート乱獲機能)であった。

 ポケモンを捕まえるみたいに、おれも歩くだけで大衆を教化、訓練し、死体のごとく従順な軍人に仕立てあげられないものか、と常々思っているよ。神々の兵隊として生きること、真理王の寵愛を受けて生きること、これこそが人間にとってもっとも得難い幸福なのだ。その機会に恵まれた者をこそ、本当の果報者とおれは呼ぶ。


2位 AVIREXの赤いレザーパーカー

 

 おれは貴族だがどちらかと言えば宮廷よりも戦場に似つかわしく育った男で、たわけた服飾品よりも拳銃や馬や従者のしつけなどを気にする性質なのだ。しかし、それでも今年手に入れたAVIREXの赤いレザーパーカーは特筆すべき購入品だ。おれが手に入れたのはゴートレザーの真っ赤なジャケット風のパーカーで、質感はよろしく、着心地は抜群、防寒性もよし、なにより見た目がイカしている逸品。赤いストライプのシャツにネクタイをビシっと締め、白いジーンズをバリっと履きこなし、赤いブーツを履き、そしてこのパーカーを羽織ればもう立派な一匹のドン・ジョヴァンニが出来上がりだ。おれのこのパーカーは高円寺の古着屋の店主をして「おれによこせ、その品は物の価値のわかるおれにこそふさわしいのだ、貴公のような荒武者よりも、放蕩を旨とするわれわれの種族にこそ与えられてしかるべきものよ」と言わしめたほどのもの。イギリス王弟殿下付きのとある公爵から送られてきた品で、十五ルイほど支払ったがいい買い物だった。

 

1位 アパートの一室(を家賃払って借りていること)

 

 結局、この年齢、この時代、このタイミングで東京に住むということが、なににも代えがたい一番の財産だとおれは思う。

 なにをするにしても、ここに勝るエリアはないのだ。オペラが見たい? よろしい、東京へ参られよ。希少本を手に入れたい? よろしい、東京へ。貴族社会へ入門したい? ならば、東京へ。友を選ばば? 東京にて。有名な画家の来訪だ。しかし、東京に。かの男の講演会は? 東京の会場でやっておる。日本最前線の瞑想指導者は東京に住んでおるし、結局、政治も経済も文化も宗教も、国内一流のものはだいたい東京さ。

 まあしかし、厳密に考えると、京都でもいいし名古屋でもいいのかもしれん(そちらにもやはり、一流のものはある。物量では東京にかなわないとしても)。言いたいことの要点はつまり、埼玉の田舎に引っ込んでいるよりも「都市」へ出てきてしまったほうが、転がっているチャンスに多くぶち当たるのだな。とりわけ、「遍歴時代」にあたる年齢のわれわれにとっては、そうだよ。聖イケダハヤト老師のように、早々に田舎引っ込もうなんてことは考えられないよ。だっていまそんなことしたら、単純労働者以外の道が閉ざされてしまうからね。とにかく、技術を磨きチャンスを得る。これが東京でのミッションだ。おれたちはわくわくしながら東京の日々を送っているよ(本当は気づいているよ。いまの時代、呼吸をするように自然に海外へ出て学問を身につける=留学することのできない人間が、次代のエリートたりえないことくらいは。おれたちは晩年まで、AIと仕事を奪い合いながらみじめに暮らすかもしれん)。

 

 

 いつかは征服するがね。東京も、ゲルタ・ストラテジー・パンデモスのとるに足らない一部分、さびれた田舎に変わるだろう。そして埼玉県深谷市が王都となる日本のパリと呼ばれることとなるだろうな。深谷ふっかちゃんなんてのは、言ってみればサモトラケのニケみたいなもんだからな。あれは着ぐるみが美術館に展示されるよ。ありし日の深谷を偲ぶよすがとして。エウロペ―の裔の子らがギリシアをあらゆる文物の源泉と見たように、われわれゲルタ人も、埼玉県と深谷地方をこそ母なる故郷と思いなす日が来るだろう。