こないだのOFF会
真理探究OFFはだいたいこんな雰囲気だ。
真理王の宮殿にて
真理王 本日、金や銀やダイヤモンドで彩られた居城、豪奢を極めしわが邸宅に足を運ばれた諸君は、みな真理を愛好し真理に死する覚悟のある勇士ばかりだ。勇敢の徳をそなえた人物との交際ほど、われわれを楽しませてくれるものはない。また真理への信仰に生きる者ほど、勇敢な民はほかにない。ああ貴公、よく来たな。そっちの貴公もだ。貴公、久しぶりだ。――さ、召使いども、金杯を月夜の美酒でいっぱいに満たせ。いつもは地下聖堂の静けさを保つこの広間が、邂逅の喜悦であふれんばかりになっているのに倣って。
詩人 まこと天頂を占める神々だって、真理王東野猛の歓待ぶりに度肝を抜かし、北極星のあたりから転げおちてこないとも限らない。それはそれとして、初めてお目にかかる方々よ、ひとつ自己紹介でもさせていただこう。私は詩人の磯山和人。磯山和人なる詩人。詩神こそ私の伴侶。
騎兵大尉 ではおれも。膂力にかけてその右に出るものなし、砂塵の豪傑、ユリクニア・アルバジェルスの騎兵大尉内藤というのがおれの名。地上に産み落とされてこのかた、受けた矢傷は二千を数え、斬り殺した仇敵は五千をゆうに超えている。遮二無二の突撃で占領した城郭、そして馬のような腰使いで征服してやった女どもの数もまた、千や二千どころじゃないのさ。
真理王 勇敢な奴。さ、そちらの方々も、霊妙なる言語の操り手と、血なまぐさい槍の使徒に続くがよい。
N嬢 はい、王さま。みなさまはじめまして。わたくしは女。地上あまたある女のなかでも、真理を愛する類の女でございます。父はさる公爵、母は伯爵家の出。人はわたくしを世間知らずの馬鹿娘、見栄えばかりよろしい人形扱いいたしますが、わたくしからしてみれば世間こそが真理知らずの馬鹿、臭気たちこめる養豚場といったところ。真理王さまやほかのみなさまと仲良くさせていただくことだけが、わたくし人生唯一の楽しみですの。
富豪 黄金の収集家です。どうも紳士諸君、そして淑女のあなた。しかし、なんとまあ見事な広間だろう。装飾ひとつとっても真理王さまの高潔な趣味が伺い知れる。やはり金というものは使い方を心得た者のところに蓄積されるべきなのだ。
占者 はじめてのかたには、はじめまして。ただの自己紹介じゃおもしろくない。ひとつ占ってさしあげます。この蒸かしたジャガイモにヨウ素液をかけて紫色になったら吉です。――吉とでました。騎兵大尉殿。
騎兵大尉 吉かい。
占者 ええ。きっと次の前線では、名誉の戦死を遂げることができましょう。さんざ敵をほふったあげく。
騎兵大尉 そりゃめでたい。ありがたい知らせをもたらしてくれた。戦場での死以上の幸福というものを、おれは想像することができない。いかな女の穴のなかといえど、死にまさる安らぎを与えてくれるとは思えん。
N嬢 まあ、騎兵大尉さま。それは女をある一面から評価したにすぎませんわ。あなたが潜り込んだ洞穴は、真理の宝石が秘められていなかったのです。わたくしのような、真理を知る女をこそ相手にするべきではありません? 人間のなかの人間、女のなかの女、真理の女を誘惑なさいませ。きっと死など忘れてしまいますから。
詩人 砂塵の豪傑ともあろう男が、女にぞっこん惚れ込んで死ぬことを忘れるとは思えんが。
騎兵大尉 N嬢の言い分はもっともだ。楽士どもがやってきて、歌と踊りの時間になったら、ひとつ口説いてみるとしようかな。ほかでもない、真理愛する女、N嬢をな。
詩人 真理とN嬢の取り合いをするのかい。愉快だな。
真理王 愉快な奴だ。
だいたい18時ごろに乾杯して、23時には解散した。