ゲルタ・ストラテジー

唯一神ゲルタヴァーナと怒れる十一の神々に敬虔なる真理探究者たちの散兵線における無謀を報道する。

ライラックの森

 早業のペン回しからやってくるようなその霊気を俺は知らない。だからこそなのだ、だからこそそのような真実が生きてくると言えるのだ。それでも我々はまだ無駄な抵抗を始めようというのだから驚き、まるで懲りていないらしいじゃないか。あの神秘的な女性の後ろ姿を追う内に迷い込んだ緑色のゲージの中には、小鳥が巨大かして鳳となったものや犬の鼻から吹き出してきたウイルスのような病原体などがうじゃうじゃしていたけれども、それだってまたこの宇宙の一部なのだからなんということはない、友達みたいなもんだろうさ。いいかい君、これから君が耳にする一切は、この世界の秘密について真実らしいことを含んじゃいない、ただの戯言だと思っていてくれればいいんだ、そうすれば君はこのまま家畜として安穏な生活を送りやがて死ぬことが出来る。いいかい、それじゃあ言うがね、黒い窓からこんにちはしてくるあのミントの匂い、それをかいだ瞬間現れる右肘の打ち身、蝉の鳴き声から分析することの出来る波状の連鎖反応、アメリカにおける実験では、これ以上の犠牲者を出すわけにはいかないと息まいている豪傑の科学者たち。啓示の時はもう過ぎたけれども、それでも遅すぎるということはありえないのだから、我々はここでのんびりコーヒーでも舐めて待っていることにしないか。水平線からパステルカラーの虹がたち現れて、クレヨンの童話に心をときめかせる少年たちの夢はひたすらに破れる。