ゲルタ・ストラテジー

唯一神ゲルタヴァーナと怒れる十一の神々に敬虔なる真理探究者たちの散兵線における無謀を報道する。

Episode6「これでもイイの!?」

今週のお題「宿題」

「あの、わたしがソウちゃんの分の宿題やっとくから、安心してね?」

まったく安心出来ない。俺の宿題ってそれ、小論文じゃねーか。お前が書いたら絶対お前の文体だって担任の白井にはばれるし、何よりお前の作文には碌な内容のモノがない。恥ずかしげも無くどんな文章にも俺のことを褒める一節を挿入してくるのだから恐ろしい。中学のころの読書感想文なんか、まったく内容に関係無いところで文脈全無視して俺の美談を書き連ねてたからな。

「ちょっとー!ソウイチ!早く私のイチゴミルク持ってきなさい!なにモタモタしてるの!」

リビングからはリコのキンキンしたボイスが響いてくる。はあ。まったくこいつらに居候されてから俺の休息は奪われつくされちまった。

――俺の名前は結城創一。ごく普通の高校2年生だ。故あって同級生の少女2人と同居している。

黒髪ロングのスタイルのいい方は幼馴染の一条優佳(いちじょうゆうか)。俺のことを異常なまでに好いてくれるがちょっとどこか抜けたところのある女の子だ。ただ学校の成績はトップクラスを維持してるのだから人間分からないものだな。少なくとも学校の成績と頭のよさは比例しないという良い例としてまっさきに挙げられるべき人間だ。

今リビングでゲームしてるツインテールの幼児体型の方は、同い年だが一応義理の姉の結城リコ。父親の再婚相手にくっついてきた。お互い会ったばかりの頃はまあ、年頃の男女ということもあって警戒し合っていたのだが、とある事件をきっかけに関係は良好なものとなった。この女、人使いが荒いのが何よりの欠点だ。弟の俺を奴隷か何かと勘違いしてるみたいだ。


キッチンでイチゴミルクのパックを取るために冷蔵庫を開けた時、リビングから、

「リコ、あなたソウちゃんをナンだと思ってるの!リコの召使じゃないのよ!いい!?ソウちゃんは私と結ばれて結城家を継ぐんだから、あなたこそ将来ソウちゃんに顎で使われるために雑用に慣れておいたほうがいいんじゃない!?」

「はぁ!?ふざけたこと言わないでよ!優佳と違って私はソウイチとは姉弟(きょうだい)なの!優佳よりも強い絆で結ばれてるんだからあんたのツケいる隙はないわよ!ふん!」

と俺を取り合う言い争いの声が聞こえてくる。いつもこの調子だから心労が絶えない。だから俺は冷蔵庫の裏に隠しておいた重機関銃を取り出して、リビングの方へ壁越しに乱射した。


ドドドオドドドッドドドドドッドオド。


家全体が震動する。打ち始めに悲鳴が聞こえたが、すぐにこの低音の轟く銃声以外の声は聞こえなくなった。

弾が切れると、静寂のみが家を支配する。ああ、やっちまった。警察に行こう。

警察に出かけるために玄関へ向かう途中、ちょっとリビングを覗いてみると。リビングは真っ赤でヌルヌルした空間になっていた。肉片が転がっていた。