ゲルタ・ストラテジー

唯一神ゲルタヴァーナと怒れる十一の神々に敬虔なる真理探究者たちの散兵線における無謀を報道する。

其の一

地中海を通ってスペインからアルジェへと航行する商業船を襲い、金品を簒奪するとある海賊団の一つ「ドン・フラミゴ」にその男は所属していた。

身長2メートル、体重100キロ以上の頑丈で屈強な体躯を持ち、父方のアルジェリア系の血のために肌は浅黒い。髪は縮れた黒く太い毛が短く頭頂部だけに局所的に生え、鋭く輝く意志の灯った眼光は対峙する者を圧倒する迫力を持っている。樽のように太い腕には奴隷の印である焼き鏝をあてられた跡が残っており、両手首には鎖がそれぞれ繋がれていた。名をアクレケスという。

アクレケスは地に産み落とされた時から勇敢で、戦士たる気質を備うべく神に定められていた。神意を悟っていた敬虔な彼の母は、彼女の出来うる限り良質な教育を彼に施し、アクレケスは読み書きも、算術も、体育も全てよく身につけていった。10歳の頃には素手でたちの悪いトルコ人8人を打ちのめし、12歳の頃にはスペイン語で書かれた騎士道物語を愛読し始めた。特に「スエロ・デ・キニョーネス」の馬上槍試合の話への愛着は激しいもので、いつしかその時が来たら自分もレオンの騎士に劣らない武勲をあげてみせようと豪語したものである。