ゲルタ・ストラテジー

唯一神ゲルタヴァーナと怒れる十一の神々に敬虔なる真理探究者たちの散兵線における無謀を報道する。

Fragment

「交流?」

それはならない。直感が口から飛び出す。紡ぎ出される韻律は一応意味を成した。

「イエス。交流。君は行きなさい」

死刑宣告だ。死刑宣告に等しい。絶望が体を襲った。脳を実感が強く貫いた。
そうだ。僕はいつかこうなることを予期していたんだ。

先生はイチモツを取り出してテラテラと横に振り、黒光りを見せ付けてきた。

「アディオゥス!スパスィーヴァ!」

それがいつもの先生の別れの挨拶だ。この日もいつもと何も変わらなかった。


――翌日。

聖堂を逃げるように飛び出し目的地に向かい始めた僕は、道中親衛隊の姿を遠くに認めたときに初めて自分が旅支度を済ませずに来てしまったことに気がついた。
無意識に食料と水の入っていた家出セットリュックは背負っていたが、剣鞘(ティンコ・カップ)を装着し忘れていた。
これはしくじった。約20キロ先の道路にゆらゆらとうごめく黒い制服は待った無しで近づいてくる。
国境を越えるまでは武器の類は隠さなければならない。

――残り親衛隊との距離約15キロ。

10キロ。

5キロ。

「そこの男!止まれぃ!」

親衛隊の拡声器から鋭い声が飛んできた。
しまった。気づかれたか。だがまだ距離はある。もとより逃げ切れる相手ではない。とる行動は一つだ。

「アームド=キャノン・バイラテル、セット!ヘッドハッチ開放、ソードライン、スタンド・バイ!」

「お、おいそこの男、何をするつもりだ!・・・・・・おい、第三親衛隊!応戦!」

下腹部に屹立する“部分人体”兵器は、鬣を逆立てる獅子となりその姿を急激に膨張させた。
――バイラテルセッティングはこれ異常ないほど完璧だ。
闘争本能が牙を剥く。眠れる戦士の血が沸き立つ。
鍛えられた実践向きの力強い腕の筋肉が、血管を浮かび上がらせグロテスクな迫力を醸し出していた。

「ティンコ=ティンコ=キャノン――テイク!」

ズギュウウウウーン!
白い閃光は地をかける汗血馬(ホース・オブ・ホース)のように優雅に、颯爽と目標に向かった。

「!」

地面が抉れる重低音が響く。砂埃が舞う。