ゲルタ・ストラテジー

唯一神ゲルタヴァーナと怒れる十一の神々に敬虔なる真理探究者たちの散兵線における無謀を報道する。

宿題はディナーの後で1

今週のお題「宿題」

「さあ、遠慮なく召し上がって下さい」

ボクはテーブルについた太陽の美少女達に食事を始めるよう促した。少女達はおどおど、わたわたとしながらおっかなびっくりナイフとフォークを使って目の前のネズミ肉の最上等のハンバーグを食べ始める。ボクもそれを見やりつつ満足して、自分の皿に手をつける。部屋にはアコステ浜の波音が届いていて、心地いいBGMの役割を果たしてくれる。カチャかチャという食器の音が盛んにたてられるが、誰も声を出す者はいなかった。

ああ苦節十数年の時、この瞬間をどれだけ待ちわびたことだろう!両親を蛮族に殺されすっかり変わってしまったボクの人生の侘しさよ!ただ復讐と報恩のことのみを考えてあらゆる修行に耐え、多くの技術と知識を身につけ、可能な限りの資源を獲得して来た。そして心の赴くままに憎き蛮族に正義の銃弾を打ち込み、報われるべき聖人には喜んで浄財し、無知と貧困の地獄から無垢の子供を救出し、花のような乙女達のくすぐったい羨望の的として有名を馳せたのである。

今テーブルについているのは、ボクと8人の少女。少女らは例外なく最上の性的魅力を発している端整な顔立ちと豊満な、或いは華奢で可憐な肉体を持っている。皆ボクの手によって苦境、不幸から引き上げられたために、またボクの発するいくつもの勇気を示してきたことの証拠であるその気力のために、ボクには頭が上がらず、ボクにこの上なく恋焦がれている。そんないじらしい彼女らの内の数名を今日は紹介しよう。それが今年の夏休みの宿題であるとボクは心得る。


①神石みや 16歳 「神刀マホロカタリの正統な後継者」

宝暦年間から継続する歴史ある神社の巫女の血を受け継ぐ少女。広範な反宗教武装勢力であるところの「ウェーブフリークス」によって捕縛されていたところをボクが救出した。黒髪ストレートロングは滝のように滑らかで神々しい。内気ではあるがボクのこととなるとあまりに大胆不敵の態度を見せるために他の少女達からは油断ならないライバルとして警戒されているようだ。彼女が自分の体内を鞘として、いつでも一心同体の状態で持ち歩いているのが神刀マホロカタリである。この神刀は霊界に満ちるエネルギーを自由に汲み取り使用することの出来るいわば井戸のような能力をもっているために、「ウェーブフリークス」の心霊学派が特に欲しがっていた。実際心霊学派の連中の手にみやが渡っていたら、拷問の末マホロカタリを回収され、抜け殻の鞘、すなわちみやの肉体は心無い「ウェーブフリークス」の悪玉どもに慰みモノとして用いられていたかもしれないのだから恐ろしい。ボクは“強引”に美を認めない。そんなのは豚の所業だとボクは信じて疑わない。


②武功ゆりか 17歳 「報天武功流の卓越せる継承者」

鎌倉時代の武将、国達枡廼秦を祖とする武術、報天武功流の免許皆伝の資格を持つ少女。報天武功流は肉体よりも精神と霊力によって生じる気迫を効率よく有用することを特徴とする武術であるから、驚くほど武功ゆりかは華奢な体つきをしている。龍宮地区にあった最後の道場である本部道場が「ウェーブフリークス」の手によって解体されようとしていたところを、ボクは豊富な資金力と政治力を用いて救った。またその数年後にいよいよ「ウェーブフリークス」が強硬手段としてゆりかの両親兄妹を誘拐した際に、ボクは彼女と組んでたった二人で「ウェーブフリークス」の根拠地に乗り込み、これを撃滅して家族を奪還したことがあった。そのため彼女はボクに大きな信頼と愛情を寄せているのである。武術家ではあるが温和で協調性に長け、家庭的な面も併せ持つ彼女はそのおっとりさから、大した脅威でないと他の少女達に判断されがちであるが、実は意識せずともかなり男性を魅了する才を多く発揮する。最近はライバルの少女達も警戒し始めた。

③夢見りりす 16歳 「最強の守護霊『後ろの百太郎』を連れる」

夢見りりすは今世紀最大の霊能者である。しかし彼女自身は霊を信じていないために今世紀最大の才能の浪費をしていると言ってよい。彼女の背後を護るのは、かの有名な心霊研究の先駆けである「後心霊科学研究所」の後教授のご子息、後一太郎氏がかつて連れていたあの『後ろの百太郎』こと、平安時代の武人「後百太郎」である。「後百太郎」は確認されている人間霊中、最も研鑽を積み高級な霊魂として地上で御勤めをされている。夢見りりすはどうしたわけか逝去された後一太郎氏の後継として「後ろの百太郎」に選ばれたのである。彼女はロマンティックな名前とは裏腹にリアリストで、寡黙な性格をしているが、ボクと二人っきりの場合のみは急に幼児退行したかのような甘えっぷりを見せる。不当に財を簒奪され貧困のうちに喘ぎ、陰徳を積む余裕も無く守護霊の真価を発揮せずに苦しんでいたところをボクに救済された。他のライバルである少女達に対する謀略には常に背筋が凍らされる。しかし守護霊には夢で悪いことせずにもっと陰徳を積めと怒られているらしい。それでも彼女は霊の存在を信じない。守護霊を「夢にいつもでてくる気障な平安貴族」呼ばわりする豪胆さを備える。