ゲルタ・ストラテジー

唯一神ゲルタヴァーナと怒れる十一の神々に敬虔なる真理探究者たちの散兵線における無謀を報道する。

God-邂逅1

怒りは人類の原動力ではあるが、同時に自らに服する神経毒でもある。
――それは時間をかけて体内に浸透し、黙秘の内に四肢を侵す。

「――少年よ、なぜ私の前に立つ」

少年は背後から《ヴァアルギオストス》の強靭なる怒気を放っていた。

「少年よ、問おう。君の怒りは君個人に恩恵を授けるのであるか。それとも人類の責任を負うものであるのか」

男もその四肢に《パストパステラ》の冷徹なる怒気を宿し、静かに少年を見据えていた。

「それは愚問と言うものではあるまいか。どうして個の感情が個のため以外の目的を持つことがありえよう」

《ヴァルギオストス》の背部から、威圧の翼が見える。

「この問いは、教義の解釈についての問いであった。して、解は今の返答によって既に導き出された。――君はどうやら怒神を宿すにはあまりに無邪気であるようだ」

《パストパステラ》の脚部に力が伝達され、点火を待つのみとなる。

「僕の怒りが怒神の婢に過ぎないと言うのですか」

少年は静かな怒気で目を見開き――

「それはまた怒神のみが教えるであろう」

――男は《パストパステラ》に体を預けた。

「!」

一瞬で男は少年に肉迫する。《パストパステラ》の驚嘆すべき跳躍の力が、男を貫徹弾の如き鋭さで空に抛った。