ゲルタ・ストラテジー

唯一神ゲルタヴァーナと怒れる十一の神々に敬虔なる真理探究者たちの散兵線における無謀を報道する。

おれがブログをはじめたきっかけ

お題「ブログをはじめたきっかけ」

 

 おれがブログをはじめたきっかけはなにかというと、浅はかな名誉欲だったと思うよ。おれは中学二年のころからnumeriとかロジパラとか侍魂読みだして、探偵ファイルに深入りし、あの吉野家コピペには「あたかも、よし」と感嘆していた人種だからね。テキストサイトで名声を博したかったのだ。大学に進学したらおもしろおかしい文章を書き連ねて、みんなの人気者になろうと画策していたのだ。

 

 でもそれはできなかったよ。かれら優れた著者みたいに、呼吸をするように愉快な文句をひねり出していくことなんて、おれにはとうてい無理だった。なにせ、田舎から出てきたばかりの粗野な牧童だもの、気の利いた言葉など一つも知らないんだからね。

 

 つまるところ、ボキャブラリーが圧倒的に不足していたんだな。このことにわりとすぐ気がついたおれは、意気消沈しながら暗い学生生活を送っていたように思う。

 

 そんでも若さというものは偉大だ、人間を行動させずにはおかないのだからな。おれは古今東西の「古典」と呼ばれる書物を読み漁りはじめた。流行の作家の娯楽的小説でもなく、安易な自己啓発本でもない。あくまでおれは「古典」にこだわった。おれはおれなりにちゃんとしたロジックをもっていたのだ。どういうことかというと、昔から「貴族」とか「」とか呼ばれる人種は「教育(=古典)」をないがしろにはしていなかったという事実がある。おれはそれを知っていた。「教育」さえあれば世の中をアッと言わるようななにか大それた詩を残すことができるのだ。だって、そうだろう。世界史の教科書に載っている人物はみな、無学な奴隷の子ではなく、家柄と財産と学問と剣に裏付けられた、立派な英雄たちなんだからな。かれらが世界を驚かせ続けてきた。それが人類の歴史だ(と、おれは思ったわけだ。その時点では。本当は、歴史なんてものはイカサマイカサマフィクションの醜いパズルに過ぎんのだろうぜ)。

 

 おれはおれの思春期に大きな影響を与えた、下品で粗野で愉快な作家たちの仲間入りをしたかった。かれらもまた、見方によっては偉大な詩人なのだからね。numeripatoさんだってありゃスゴいじゃないか。たまに新宿へ行くと、ロフトかなんかでかれがイベント打ってるもんな。ずいぶんと長く人気を保っていられるものだよな。それもひとえに、かれの学識と諧謔の巧みさに因るものなのさ。その二つの要素を備えた口からのみ、陽気な詩句は矢継ぎ早に飛び出すのだから。

 

 そんでもまあ、おれが人並みに読書できたかといえば、どうだろうね。自信はまったくないのさ。生来の怠惰と、負け犬根性がおれを破滅させてしまったと見るべきだろうな。まったくおれひとりの責任だよ。なにせ、現実問題、おれはたいした仕事を残していないのだからね、詩の分野で。未練がましく、せこせこと毎日なにかしら文章を残してはいるものの、詩神たち(ムーサイオス)は無慈悲なもので、おれの作品に「魅力」という黄金を注ぎ込んではくれないのだ。

 

 名誉! それはおれが人生で一番大好きなものさ。人間、あらゆることを空想するものだと思うが、とりわけおれがよくやる空想は、莫大な金を得てはこれを友人にくれてやり、素晴らしい地位を得てはこれをためらわず捨て、最後に残った「名誉」の二文字のみで人類史に輝かしい足跡を残す。これだね。おれは案外野心家なのだな。名誉を愛好する種族というのは、独裁者か負け犬か、そのどちらかの結末を迎えるものだと相場が決まっているのだが、おれはためらわずこの道を行く

 

 おれはゲルタ・ストラテジーがいつか「あの東野猛が遍歴時代に綴っていた文章だぜ、恐ろしいもんだ」と言われちまうようなになるつもりさ。どういう形でそれを実現するのだ? と訊かれたら、困っちまうが……。とにかく、四肢は綿毛のごとく軽やかに動くおれ、眼光鋭く世界を睥睨するおれ、剣の腕ではいかなる古豪をも唸らせるおれが、なにもしないまま終わっちまうなんてこと、ないだろう。

 

 いや、どうだかな。それもまた一つの結果かもしれんな。おれは業(カルマ)を当然のごとく信じているし、その強大な力にはどうしたって抗えないこともよく知っている。おれの思考、行いが卑しければ、自然卑しい結果がついてまわるだろうぜ。

 

 力の充実は、大事だ。だがそれ以上に、あらゆる希望に期待を抱かず、あらゆる事象に諦めの心をもって接する。そんな静けさもまた、悪いものではないかもしれんと思う今日この頃なのだな。名誉ばっかり追い求めるのは、苦しいし、むなしいよ、存外

 

 諸君に歓喜に満ちた挨拶を送る!

 

 ごきげんよう! 今日を生きよ! よく生きよ!

 おれはおれなりの生を送っているぞ!

 諸君! わが同胞よ!

 怠けず、打ちひしがれず、誇りある生を!

 怠けず、打ちひしがれず、誇りある生を、だ!