ゲルタ・ストラテジー

唯一神ゲルタヴァーナと怒れる十一の神々に敬虔なる真理探究者たちの散兵線における無謀を報道する。

背教者の集い

 「こいつは本当に許せないやつさね。まったく神様にいちいち背くようなことをばかりしなさるんだから。地獄というものの恐ろしさを知らないんじゃないかしら。また聖書を一度も開いたことのない種族に違いないよ。こうしたことは決して十字架に頭を垂れるキリスト教徒に出来たことじゃあない。恐ろしいことだよ本当に、アーメン。こんな男でさえ神様はお許しになるのだろう、大変慈悲深い神様、ああ、ああ」

 「黙りおれ蛮族、なにがキリスト教だ、そのような偶像の民の教えなどにこの俺は騙されんぞ。俺が信じるのはただ一つ、剣を振るっては敵に血を吐き出させ、槍を投げては獅子をも殺すこの剛勇の腕のみだ。俺は生まれながらにして英雄なのだよ。汝殺すなかれなどというのは、まるで女の腐ったような思想じゃないか。俺は俺が望むように攻め、殺し、奪い、食い、寝て、死んでいくのだ」

 「わたくし恐くって。あなたのようなモーロ人がこんなに近くにいるということが。どうかこれ以上近寄らないでちょうだい。神様は見ておりますからね、全ての悪しき考えや習慣を。そして最後の日には……考えるだに恐ろしいことですわ」

 「そんな神などというものよりもだ、俺はただ大地のだだっ広さに賛嘆し、天空のあまりの高さに感激し、獣の肉がとても旨いのに満足し、そして、なにより俺が優れて強い男であるということを心の底から幸運に思う、こういう大変健全で健康な感情の動きとともに生きているのだ。邪魔をしてくれるな、案山子共め。おまえのような細腕の女があんまりしゃべりすぎるのを見ていると虫酸が走るわい。女などというのはただ子供を産んで育てていればよいのであって、神などというものに与える愛は全て自分の子にでも投げかけてやればいいものを、どうしたことか、やはりおまえたちが悪魔と呼んでいるもの、それはおまえたち自身なのではないか」

 「悪魔の話をなさらないで! まったく信じられないことを次から次へと口走る恐い獅子! 閉じこめておかないことには。神様によって裁かれることでしょうよ。差し当たりこの地上においてはそんな蛮勇を誇っていらしても、永遠の楽園の中にまでやってこれるという道理はありませんわ。帰ってちょうだい、離れてちょうだい」

 「お嬢さんもうこいつはここへ置いて、われわれは行っちまいましょうや。あんまり長く敬虔じゃない話を続けるわけにはいきません。ただただ神様をお愛しなさい。そして天使のような眠りにつくことですよ。この男の顔なんかは早々に忘れちまうことです。まったく、悪魔が獅子に宿って言葉を発するような、そういう怪物ですよこの男は」

 「ふん、そんならそうとさっさと行ってしまえばいいものを。神様がどうだのとわけの分からないことをいろいろと言うものだから、俺も迷惑してしまう。早く行って十字架でも何でも食えばよろしい、俺はここで獅子や鹿や、あるいは柔らかい肉付きの人間の子供を殺して食っておるから」